クルマの故障と飛行機の故障とどこが違う?
飛行機はその場で停めて修理ができない!笑い話といえばそれまでだが、実際は怖い警告である。同じことは船船にもいえる。もし洋上で転覆、火災、エンジントラブルなどに見舞われたら、陸から遠く離れた波問に取り残される。そのまま生命にかかわる大事故につながらないとも限らない。「守ろう安全、受けよう船検」というJCIの合い言葉がここから生まれる。
安全運航の確保と、万一の事故に備えて船検は「船舶安全法」に基づいて、船舶の安全性をチェックし、船舶の事故防止と乗っている人の生命を守ることを目的とした制度である。総トン数20トン未満の小型船舶の船検は、日本小型船舶検査機構(JCI)が実施している。
この船検はJCIの各支部ごとに定めた「船検カレンダー(巡同日程表)」により、地区ごとに出張する日を定め、漁港やマリーナなど保管、係留場所を拠点として、検査員が出張して実施する。ゴムボート、水上オートバイその他、白宅で保管してある運搬可能のボートは、JCI支部が指定した検査場所、または支部の検査場に持ち込んで検査が行われる。
今年2月、東京は新木場、昔からの材木問屋が立ち並ぶ一画に、鉄筋コンクリート造りの建物が新築築された。JCI東京支部(遠藤義之支部長)である。ここは東京都および埼玉、群馬、栃木の1都3県を管轄している。管内の漁船、ヨット、ボートそのほか、船遊びの屋形船なども検査する。だから猛烈に忙しい。
ではその船検とは、どのような所を、どのような手順で行われるのか?

検査の主な内容は、
「安全運航の確保のために」船体の構造、強度、復原性の確認/エンジンの構造、強度、作動の確認/機関室燃料油など火災爆発防止の確認/舵効き、プロペラなどの確認/航海用具、船灯などの備え付けの確認。
また「万一の事故時の備えとして」脱出口、脱出通路などの確認/救命設備・消防設備・遭難信号の備え付けの確認などがある。
うっかりミスの点検も、念入りに行われる。これらの船検の過程で、船の船長自身は愛艇の整備が万全のつもりでいても、思わぬうっかりミスを指摘されることがよくある。岡田篤・検査員によると、例えば「救命胴衣」はそろっていて、搭載場所も表示されているが、その場所に置かれていない。
小型船はスペースが狭いため、ついベッドの下などにしまい込んであることが少なくない。船内のほうぼうに散在していることもある。緊急時に着用しなければならぬものなのに、すぐ取り出せる場所に置かれていないとまずい。船長本人はどこにあるかを知っていても、第三者が乗船した場合など、あるべき場所に見つからないと困るのだ。また時々この救命胴衣のファスナーがスムースに開閉しないことがある。潮気を含んでサビついてしまっていたり、長期問しまい込んであったためカビがはえていたりするのである。せっかくありながらものの役に立たないのだ。
これもまたよくあるケースだが、エンジンをあまり使わないために起きるトラブルだ。
ブレジャーボートの場合、エンジンの稼働時間が比較的少ないので、磨耗などで機械的にそう悪くならない。しかし船もクルマと同じで適度に乗ったほうが良い。「私は年に2〜3回しか乗らないから(悪くなっているはずがない)」と言う人もある。だが何カ月も乗らずに放っておくと、オイルが劣化したり、機械の油分が下へさがってしまいサビが起きやすい。実に使っていない船がずいぶん多いという。
これに関連して機関室の火災対策も重要だ。例えば「自動拡散型液体(粉末)消火器」というのがある。これは閉囲された無人の機関室に固定設置する。周囲の温度が90〜110度になると作動、自動的に消火薬剤を放出拡散し、消火するものだ。これが機関室とは別の場所に放置されていたり、振動ではずれたショックでガラス部が割れて役に立たなくなっていたりする。

あるいは船灯についてもいろいろ問題が出る。マスト灯など決められた高さの規定が守られていない。東京・隅田川のように橋がたくさんある河川を往来する船は、橋桁の高さとの関係でマスト灯などを短く低くしたままにしているケースが見られるなどなど、検査は多岐にわたって厳しく行われる。
検査員は巡回・出張検査で、拠点を飛び回る毎目現在、JCI東京支部には、支部長以下8人の検査員が活躍している。検査員の年間検査隻数は全国平均で年間一人900隻にものぽるという。
東京支部でも夏のシーズン中はー日の検査隻数が20隻を超えることもある。漁港、マリーナ、係留河川を出張検査で飛び回る毎日だ。
この出張検査でちょっと手間のかかるのがエンジンテストである。
東京都の場合は陸置きの船が相当数ある。そこヘドラムかんを運んで水を張り、船外機を浸けて回して調べる。これはなかなかの肉体労働だ。
と同時に東京支部へ持ち込まれた船の検査も並行して行われる。
東京支部一階は広い検査場になっている。クレーン、水槽その他の設備も整い、どのような検査にも対応できる。今年のゴールデンウィークの前の金曜日には1日17隻の検査をこなしたこともある。普通、出張検査の場合は検査が終了し「船舶検査証書」などが郵送されるが、届くのに3日ほどかかる。持ち込み検査だとその日のうちに必要な証書などがもらえるので、最近はこれが増えてきている。
では船検を受けるのには、どんな手続きが必要なのか?
船検の中請は、船舶所有者またはその代理人(委任状が必要)が行う。申請書類は最寄りのJCI支部(別掲の支部リスト参照)、または小型船舶の販売店、マリーナ、漁協などに置かれている(入手できないときはJCIに申請すれば郵送される)。
その「船舶検査申請書」に必要事項を記入し、郵便局などで検査手数料を払い込み、「手数料払込証明書」を添付して最寄りの支部へ提出する(郵送も受け付ける)。
船検は前述のように、巡回日程に基づいて実施され、地区ごとに出張する日が決まっている。そこで検査を担当する支部へ連絡をとり、検査の日取りを調整する。船検は、航行区域、最大搭載人員、航行上の条件など内容に応じて適用される技術基準が違ってる。検査の申請時に内容に応じた準備が指示されるので、その準備を確実に済ませておく。

検査当日は、船体、エンジンの状態など質問されるので、船舶所有者、船長、またはその船のことがよく分かっている人が必ず立ち会う。
検査結果に基づいて作成された「船舶検査証書」「船舶検査手帳」「船舶検査済票」が支部から交付され、以上ですべてが終了する。
「必要な準備を整えておいていただくと検査は非常にスムースに早く済みます。私どもは検査する立場からときに厳しく一言うこともあ
ります。ケムたい存在かもしれません。しかし一方、私たちは小型船、小型船舶のオーナーの方々にじかに接する立場ですので、ルールの不備な点など気付いた点をどしどし言って下されば、それらのご意見を我々の検査のやり方、ルールにできる限り反映していきた
いと思っています。決してユーザーの敵ではありません」
と、遠藤・東京支部長は言う。
船検はあくまでハード面で行われる。しかしソフト面、心構えの面、つまり船が好きな人、船にいそしむ人、船を大事にする人の船は、申し分なくよく整備されているという。
ちなみに、「船舶検査証書」の有効期間は6年である(旅客船の場合は5年)。その間に3年目に中間検査がある
三年前に受けた中間検査の様子はここのコラムに書きましたが、今年は六年毎に来る定期検査を受けますのでその様子も書こうと思っています。その検査でお世話になるJCIついて、紹介している少し昔の記事ですが有りましたので載せてみます。以下’99年9月ボート倶楽部誌より(H17.6 しんゆう)